新型コロナウイルスのペットへの感染リスク
本日時点で日本国内での蔓延が危惧されている新型コロナウイルス(Covid-19)。
前回の記事で”菌を制する者は!!”と強く申し上げているからには、この問題を触れずにはいられないので、簡単にペットと新型コロナウイルスの関係をご紹介しておきます。
まず、菌とウイルスの違いを理解いただきたいと思います。
1.サイズ
簡単に言うと、両方とも「微生物」というくくりでは同一です。微生物とは、肉眼では見ることができない単細胞の微細な生物で、菌は数μm、ウイルスは20~300nm(nm=μmの1000分の1)のサイズです。『ウイルスにはマスクが有効ではない』というのはこんなに小さいからなんですね。ちなみにスギ花粉は30~40μmです。
2.病原性
菌は、病原性という観点からは大きく分けて3種類です。俗に言う『善玉菌』『悪玉菌』『日和見菌』です。日和見菌は普段は善玉菌ですが悪玉菌にもなりうる菌です。例えば、皮膚で火傷などを負ったとき、黄色ブドウ球菌による感染症などがおこりえます。ブドウ球菌は普段私たちの体の中にいる典型的な常在菌の1つですが、火傷といった免疫力が低下した状態になると、悪さをするようになってしまうのです。
私が”菌を制する者は・・・”と言っているのは、この善玉菌と日和見菌を上手に理解することで、健康を維持するポイントの1つではないかと考えたからなのです。
さて、話はそれましたが、一方でウイルスはどうかというと、ウイルスはまず病原性を持っています。そのため、ウイルスはしっかり対策をする必要があります。
3.増殖の仕方
菌は、菌そのものが細胞分裂をすることで増殖していきます。一方ウイルスは、細胞壁、細胞質、核(DNAなど遺伝子のもと)を持ちません。そのため、増殖するためには、生物の細胞に寄生して、細胞内に入る混むことによって増殖をしていきます。怖いですね……
さて、ウイルスとはなんぞやというのがなんとなくイメージいただけたところで、今回のコロナウイルスです。
コロナウイルスは、ウイルスの表面の形が太陽のコロナに似ていることから1965年に命名されました。このコロナウイルス。実際はその形態的特徴から続々と分類され、ヒトコロナウイルスをはじめ、マウス、ブタ、イヌ、ニワトリなどにもそれぞれに感染するウイルスが存在します。
●ヒトコロナウイルス(αコロナウイルス)
風邪の一般的なウイルスです。2~4日の潜伏期間を経て、鼻水、鼻づまり、くしゃみ、のどの痛みが生じます。発熱はないこともあり、1週間くらいで消退していきます。
●犬コロナウイルス/猫コロナウイルス(αコロナウイルス)
犬コロナウイルスおよび猫コロナウイルスはヒトとは全く異なる病原性を現します。症状は腸炎です。そのため、下痢、嘔吐、食欲不振などの症状が現れます。
ということで、まずここからわかるように、今流行している新型コロナウイルはβコロナウイルスに属し、従来のヒトコロナウィルス(α)とも、イヌ・ネコに感染するコロナウイルス(α)とも別物であるということです。
次に、この新型コロナウイルスはイヌやネコに寄生し、症状は出ないとしても媒介して人間にうつすのではないか?という疑問です。
それに関しては、WSAVA(世界獣医師学会)が、下記の通り回答しています。
『現段階で、Covid-19が犬や猫(家畜も含む)に伝染したというデータはない。過剰な心配をしなくてよいし、犬コロナウイルスワクチンを投与させる必要もない』
ただし、新型であるがゆえにこれからどういう挙動をするのかが見えず、言い切ることは誰もできません。こうとも触れています。
『もし感染をした場合は、ペットの世話をしないでください。コロナウイルスは新型であり、もし、動物で感染が広がると別のコロナウイルスとして拡がり、動物と人の間で感染を広げる可能性もあります。』
まずは私たちが冷静に”風邪のウイルスの一種”であることを認識し、日ごろできる予防をするべきだと考えます。
私のような第一線の感染専門の薬剤師ではないので、ごくごく一般論と世界の獣医師の学会の見解を紹介させていただきました。
日ごろからペットを飼っている皆さんは清潔を意識されていると思うので、それに加えてアルコールの手指消毒とうがいをより心がけていただければよいと思います。
とはいえ、皆さん、十分注意していきましょうね。
参考文献:
シンプル微生物学(南江堂)
WSAVA(https://wsava.org/):『The New Coronavirus and Companion Animals』
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